【SadoのSM小説】
最期のSM小説家
第二十一幕


篭城事件


この物語はフィックションであり実在の人物機関とはなんらかかわりがありません。
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 二〇二十一年立春中元。太陰太陽暦一月九日。
 (この二十四節気は平気法によるものです)
 二〇二十一年二月二十日。
 緊急事態宣言はまだ解除されない。また名古屋市千種区東条ビル篭城事件も解決しない。
 浅間山荘事件以上の篭城事件と言える。
 ダッカ事件の様な超法規的処置もできない。
 犯人ら五人は交代で睡眠をとる。食料も備蓄されている。電気は建物内で発電する。用意周到な犯人らである。
 静岡県宇佐美。如月鬼堂の居間。館山弁護士とテレビ会議が繋がっていた。
 本日はインターネットアダルト放送のニューススタジオに入る。
 コメントに備えて館山弁護士と見解をすりあわせる。
 「人質奪還のチャンスはヘリで容疑者を解放して空港で飛行機に乗り移る時でどうだ」
 「そうですね。それはもう少し考えた方が」
 館山弁護士は疑問を呈する。
 「万一奪還に失敗すると犯人らが逃亡後人質は帰って来ない可能性が高い」
 「そうです」
 ここは一致する。
 「今回は奪還のチャンスには触れないで行くか」
 「そいですね」
 館山弁護士の検証を受けて如月鬼堂は瀬里菜の運転する車で宇佐美の駅まで向かう。伊東線から新幹線に乗り換えてスタジオに入る。
 
 市川沙耶香は張り裂けそうな心臓を抑えて豊洲のプレイルームに来た。
 一人目の会員からの指名予約である。
 ショーのラストハプニングで一気に指名が入った。それが気分を重くしている。最悪の姿を晒してしまった。それが悦ばれたらしい。
 一晩二十五万。客は三十万払っている。通常のハードコースでは客から八万。手取りは五万である。
 会員はプレイルーム使用なので一晩二十五万で入ってくれる。四人付けば百万である。あと五百万くらいは得たい。
 指名はそれを達成するにほぼ足りる程度に入っている。それなのにそれは限りなく遠い事に思える。
 部屋に入って正座して両手を着いて挨拶する。
 「本日はハードSM嬢といたしまして私の全身でご奉仕申し上げます。どうぞこの躰をご存分に虐め辱めてお遊び下さい」
 同じ台詞だがやや端折った。
 本当に言いたくない台詞である。ソープランドで高級店に勤めてもこの半分も稼げない。どうしてもこれしかないのである。
 直ぐに全裸を要求された。先にシャワーは使わせない。
 男はブラを外すところから自分の手を出す。従うしかない。下着も新しい物で着替えて一時間と経ってない。
 男は四十代。公務員にも見える。接待かと疑うが愛好会の会員である。賄賂で潤っているのかもしれない。
 現代でそんな事はと思うが真相は分らない。
 市川沙耶香は拷問椅子に固定された。動画で鮮明に公開された女の部分を改めて執拗に鑑賞される。
 男は大量にピンチを用意している。
 「クリップにしたいが鬼堂先生がピンチまでと決めてしまった」
 男は物足りない様子だがピンチでも充分に効果がある。
 男の残忍さがずさりと市川沙耶香の心に刺さる。
 皮膚を小さめに鋏む。痛みの効果を考慮している。乳首だけ深く鋏む。慣れたやり方である。
 市川沙耶香は男が自分の失禁を期待していると思う。二人だけである。失禁だけならさっさと応じて見せて楽をした方が良いとさえ思う。
 だが男は何回か愉しむ構えである。
 どうしても経歴、気丈に見える市川沙耶香の容姿。資金繰りという目的から今だけ玩具にできる女と男らの加虐心は滾っている。
 男は鞭を手にしていながら蝋燭に点火する。
 虐め心が軽くないことが市川沙耶香にも強く感じ取れる。
 ピンチを付けた躰に蝋涙を流す。
 「あ、ああ、ああーーーーーーーーーーーーーーーーー」
 目論見があるのか。良く解らないやり方である。
 男は蝋涙が固まるのを待つ間暫く市川沙耶香の唇を貪る。
 ショーではディープキスはなかった。これも堪えなければ成らない。
 鞭の先端でピンチが抓んだ根元を叩く。
 「う、ううーーーーーーーーーー。うーーーーーーーーーーーーーー」
 洗濯ばさみは直ぐに飛ぶ。
 市川沙耶香から甲高い悲鳴が上がる。涙は無いが顔の表情は強烈な泣き顔である。
 次は乳首のピンチを叩く。
 「うおお、お、おおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
 ピンチの咥えがずれて浅くなる。繊細な痛みが沁み渡る泣き顔の表情である。まだ涙は無い。
 男は市川沙耶香が痛がる乳首の先端を浅く抓んだピンチを後にしてもう片方の乳首のピンチを叩く。
 「うーー。ううーーーーーーーーーーーー」
 こっちも咥えが僅かにずれる。
 市川沙耶香の半べその表情は更に軋む。
 男は残忍さを強く秘めた悦びの表情を微かに崩す。
 乳首に被った蝋涙が半分崩れて部分的に残った。その部分でピンチが飛ぶのを遮っている。
 次は乳房のピンチを飛ばす。
 「ううーーー。うーーーーーーーーーー。うーーーーーーー」
 蝋涙と一緒にピンチは飛ぶ。咥えが僅かなので繊細な痛みが沁みる。
 市川沙耶香は目を強く閉じて次の叩きに身構える。
 乳房を抓んだピンチの根元を掃う様に二つまとめて飛ばす。
 「あううーーーーーーーーーーー。はあーーーーーーーー。ううーーーーーーーーーーー。あはーーーーーーーーーーーーーーー。ああーーーーーーー」
 痛みに市川沙耶香の悲痛な泣き顔は強く暴れる。甲高い悲鳴を幾重にも搾り出す。
 これには男の怒張した一物を格段に刺激した。
 男は一物を取り出す。
 市川沙耶香は直ぐに入って来ると判った。
 文書の何処にも書いてないが暗黙で認めるしかない。
 「いいよな」
 男は了解を取って来た。だめと言えば何か稼ぎに影響すると思った。SMに比べればこの際やらせるくらい何ともない。
 「ええ」
 市川沙耶香は仕方なく小声で了解する。
 男は鞭を持ったまま挿入して来る。
 市川沙耶香は顔を叛けて受け入れる。
 男はさおを強く動かしながら鞭を短く持って僅かに乳首を抓んだピンチを飛ばす。
 「あはーーーーーーーーー。あはああーーーーーーーーーーーーーーーー」
 男の刺激は一気に上がる。
 続いてもう一個を飛ばす。
 「うおーーーーーーーー。う、うう、うーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
 市川沙耶香の甲高い悲鳴。更に痛みに軋む泣き悲鳴を噛み締めて男は果てる。
 情液は市川沙耶香の女の奥に流し込まれた。
 市川沙耶香は警戒してピルを飲んでいた。もとよりソープで働く事を考えた。こっちだけで済めばとさえ思う。
 男は残った蝋涙を一気に鞭で叩き落とす。
 「うおーーーーーーーー。ううおおーーーーーーーー」
 先ほどの悲鳴ほどではない。
 男はバスに湯を張る。自分も服を脱いでシャワーを浴びる。そしてここで市川沙耶香を拷問椅子から開放する。
 男は市川沙耶香をバスタブに引っ張る。
 男は殆どしゃべらない。興奮度は覚めてない様子である。浴槽の中で市川沙耶香の躰を満遍なく触って躰に残った蝋涙を剥がす。
 無言で唇を要求する。
 市川沙耶香も抵抗はしない。
 男は暫く市川沙耶香の唇を貪って湯から引っ張り出す。
 まだ時間はたっぷり有る。
 市川沙耶香は早く終わってほしい。
 今度は手首を縛り合わせる。それを天井のフックに引っ掛け踵が床に着いた状態で張る。
 左脚を引いて脚首に縄を掛ける。そのまま天井の離れたフックに通して引っ張り上げる。
 市川沙耶香の躰は弓なりに成る。股間は広がり女の部分は丸出しに成った。
 男はもう一度ピンチを持ち出す。
 今度は剥き出しの銅線と電源トランスも持ち出す。
 高く上がった左脚の内腿の柔らかい部分を膝下から股間に向かって銅線と一緒に鋏んでゆく。
 女の部分のびらびらを片側だけ三本鋏む。更にクリトリスを剥く。
 「え、ええーーーーーーーーーーー」
 市川沙耶香は悲痛な声で叫ぶ。
 男は構わずクリトリスに銅線を巻く。
 「え、えーーーーーーーーーー」
 市川沙耶香は恐怖に縮み上がる。これを引っ張って飛ばす事は容易に想像が付く。
 ここで男は若干考えてさすがに撒き付けるのは止める。クリトリスをピンチで鋏んでその外側に銅線を回す。
 そこから折り返して反対側のビラビラにも三本鋏み付ける。
 そのまま右脚の太腿の内側を膝上まで五センチ置きに鋏んできた。その先端をトランスの端子に接続する。
 更にピンチのバネとなる円形の金属の中に左脚の膝下から順に蛸糸を通す。
 更に残ったピンチで乳首を鋏む。乳輪の根元を両側から二本で鋏む。ピンチは乳首の両側から四十五度の角度にぴんと立っている。
 左右同じ様に鋏まれる。
 「はあ」
 市川沙耶香は辛い息を漏らす。
 男はトランスのスイッチに手を掛ける。
 「スイッチONと言ってくれ」
 男は市川沙耶香自らスイッチを入れる要求を強要する。
 市川沙耶香は暫く躊躇した。
 抵抗しても無駄とは分っている。
 「スイッチ・・・・ON」
 辛さと恐怖を飲み込む様に言葉を発する。
 男の指がゆっくりつまみを回す。
 「あ、あーーーーーーーーーーーーー。あはあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。ああーーーーーーーーーーーーーー」
 市川沙耶香の躰は一気に硬直して震撼する。目を見開き大口を破裂させて悲鳴を轟かせる。
 「あはあーーーーーーーーーーーーーーーーーー。ああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。ああーーーーーーーーーーーーーーー」
 頭を後ろに反らせて恍惚の表情で断続的に悲鳴を搾り出す。
 バスタオル一枚の男のさおはその内側で強く怒張している。
 男は一度電流を止める。
 「あはあ。はあ。はあ。はあ。はあ。はあ」
 市川沙耶香は暫く荒い息遣いを続ける。
 男は暫く間を置いて同じ要求をする。
 市川沙耶香は痛みを思うと胸に重圧が掛かる。
 それでも覚悟をする。終わらせるしかないと自分に言い聞かせる。
 「スイッチ。ああ。・・ON」
 男は低めにスイッチを入れる。
 「う、ううーーーーーーーーーーーー」
 それでも市川沙耶香は眉間に三重に皺を刻んだ顔を振って悲鳴を漏らす。
 市川沙耶香の苦しむ姿を愉しみながら徐々に電圧を上げる。
 「あ、ああーーーーーーーーーーーーーーーー。あ、あ、ああ、ああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
 市川沙耶香の躰は強く震撼して一気に恍惚の表情になる。顔の表情を究極に軋ませて頭を振って藻掻く。
 男はそれを暫く愉しむ。
 なかなか切らない。食い入る様に市川沙耶香の苦しむ表情に見入る。だが緊張した表情で状況を観察しながら諦めて電流を止める。
 「あは。あはあ。はあ。はあ。はあ。はあ」
 市川沙耶香は縄にぶら下って荒い息遣いを続ける。
 男は暫く間を置く。
 「この糸を引っ張るからもう一度スイッチONと言って」
 男は恐ろしい要求をする。
 「・・・・・」
 市川沙耶香は言葉も返せない。恐怖に震える。
 男は糸を手で握ってスイッチに手を掛けて待つ。
 市川沙耶香も時間が経たない方が良いと分っている。恐ろしさに躰が震える。それでも仕方なく覚悟を決める。
 「スイッチON」
 一気に言ってしまう。
 電流が一気に上がる。
 「うう、おおーーーーーーーーーーーーーーーーー。あ、ああ、ああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。あーーがあーーーーーーーーーー」
 男は直ぐに糸を引かない。
 まだ恍惚の表情で藻掻く市川沙耶香を愉しむ。
 「ああーーーーーーーーーーーーーーん。ああーーーーーーーーーーーー。ああーーーーーーーーーーーーーーーーーーん」
 市川沙耶香はもう堪えられない。
 男はまだ愉しみたいがここで糸を一気に引っ張る。
 「うおおーーーーーーーーーーーーー。ううおおーーーーーーーーーーーーーーーー。ううおおーーーーーーーーーーー。ぐおおーーーーーーーーー」
 糸は左脚の内腿が一気に飛び股間のところで一度止まる。
 男は股間のびらびらを鋏んだ三本を市川沙耶香の強烈な悲鳴を愉しみながら一本ずつ飛ばしてゆく。
 「う、う、おお、おーーーーーーーーーーーーーーー。うおーーーーーーーーーーーーー。ううおおーーーーーーーーーーーー」
 続いて一気に右脚の内腿から飛ぶ。市川沙耶香から何度も強烈な悲鳴が轟く。
 「ああはん。あはあーーーーん。ああーーーーーーーん。ああーーーーーーーーーーーー。ああーーーーーーーーー。ああーーーーーーーーー」
 市川沙耶香は堪らない痛みに藻掻き暴れ悲鳴を叫び続ける。
 そして遂に失禁した。
 「ああーーーーーーー。あはあーーーーーーーん。ああ。ああ。ああ。ああ。ああ。あはあ。はあ。はあ。はあ」
 市川沙耶香は荒い息遣いで躰の震えは止まらない。床に着いた右脚もその下の床もびしょ濡れである。
 堪えられず涙が溢れ出ている。
 暫くして落ち着いてもまだ終わりではない。乳房のピンチに目をやる。市川沙耶香には恐怖の地雷と同じである。
 愛好会のショーで起きたラストの恐怖が蘇る。これでショーの時とんでもない醜態を晒して会員を悦ばせてしまった。
 まだ二時間には一時間近くある。
 男は冷蔵庫からビールを出して料金箱に千円札を入れる。モニターをつけてそれを観ながら飲み始める。
 それは市川沙耶香のショーの録画である。
 カーソルを最後のシーンまで送る。
 市川沙耶香には堪えられない意地悪である。
 そしてこれを見せられながら同じ恐怖を待たされるのである。
 録画から市川沙耶香自身の狂った様な悲鳴を聞きながら同じ恐怖の時間を待つのは如何であろうか。
 男は虐めに酔いしれ満足を満喫している。
 三十万の価値は充分であった。
 二時間ぴったり計って左脚を開放する。続いて腕も開放する。
 「さあ。自由に取っていいよ」
 男は突き放す。
 「ああ」
 市川沙耶香は両方のピンチを見比べて震える手で掴もうとするが怖くてなかなかできない。
 「早くしないと痛みはどんどん増すぞ」
 男は追い詰めて愉しむ。
 「あ、ああ。ああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん」
 市川沙耶香は狂った様に叫んで四本を一気に掴んで空中に離す。
 「うおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。ううおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
 床を転げまわる。
 男は暫くそれを鑑賞する。
 市川沙耶香は自分で乳房を揉んで涙をぽろぽろ零す。
 男は電マを二本渡す。そして自分だけ服を着け始めた。
 市川沙耶香は悲鳴を上げ泣きながら二本の電マを持って乳房をマッサージする。軋む表情が強烈な痛みを物語っている。
 男はよく自分でマッサージできると感心しながら出て行く。
 
 二月二十四日。
 警察は穴を掘って地下のピットの水を抜いて地下から進入した。だが犯人らは既にこの行動をキャッチしていた。
 「警察部隊が地下のピットから入って来る。ピットの水を抜いた」
 監視していた犯人の一人が報告する。
 「予定通りだ」
 広末鈴夏を鞭で叩いていた犯人が断言する。
 四人の女性は一瞬期待を掛けたが恐々としている。
 「警察部隊が地下のピットから全員上がった時点で掛かれ」
 「おう」
 警察部隊は警戒してピットに数名残り掘ってきた穴にも何名か残った。
 地下室の床は鉄板に成っていた。歩くと音がする。静かに動くしかない。
 「階段は壊されてエレベーターは電源が切られています。地下室は完全に上と遮断されています」
 隊長らしきが本部に報告する。
 警察部隊はエレベーターの軌道を登る判断をした。
 一部のスプリンクラーから液体が飛び出す。
 「ガソリンの臭いだ」
 警察隊員が叫ぶ。
 次の瞬間。天井の端子から火花が飛ぶ。
 空中に撒かれたガソリンに着火する。
 「あーーーーーーーーー」
 「退却しろ」
 僅かなガソリンでも煙が充満する。
 足元の鉄板が一気に熱くなる。
 「うおおーーーーーーーーーー」
 下から強い熱が上がってくる。僅かなガソリンが油代わりとなる。フライパンの上に居る状態である。
 ピットの中もガソリンが流され着火される。一気に煙はピットに充満する。
 警察部隊は一気に退却する。
 それでも地下室に上がった全員が倒れた。ピットも同様で大方が逃げ遅れた。
 犯人らは暫く待って煙を抜く。
 焼け焦げた警察隊員の遺体が転がっている。
 四人の女性はその映像に悲鳴を上げる者。泣き出す者。みな犯人らの防備に驚愕して絶望する。
 テレビでは臨時ニュースで状況を伝えていた。
 警察部隊の作戦失敗は社会に深刻に重い衝撃を与えた。
 その後犯人らは広末鈴夏の拷問動画を配給した。
 『あと二十四時間以内に回答しないと次の犠牲者が出る』
 動画にこの字幕が入っていた。
 更に報道は震撼した。
 
 静岡県宇佐美。如月鬼堂の居間の囲炉裏端である。足湯を張ってくつろぎながら炉端焼きを焼いてビールを飲んでいた。
 テレビは速報からニュース番組に切り替わって状況を伝えていた。
 「いったいどうなるの」
 珠洲は深刻な表情で画面に釘付けである。
 瀬里菜も黙って画面を見ている。囲炉裏に載せた網には烏賊が焼けている。烏賊の他に帆立も焼こうとしていた。
 カウンターにはマグロの刺身が載っている。
 「どっちにしても警察も政府も非難は免れない」
 如月鬼堂は断言する。
 館山弁護士からテレビ会議のコールが入る。
 珠洲と瀬里菜は全裸であった。直ぐにワンピースを被る。
 「大変な事態になりましたな」
 館山弁護士も驚いている。
 「もう超法規的処置以外ないだろう。日本政府は身代金を出さないことになっているが、この犯人は金を要求してない」
 だが館山弁護士は如月鬼堂の見解にやや首を傾げる。
 「決断しなければ見殺しだ。非難は限りない。警察も相当犠牲を出した」
 如月鬼堂は更に強気で発言する。
 「それが問題では」
 館山弁護士は警察の犠牲の部分を見ている。
 「最終的には内閣の判断だ。ヘリから飛行機に乗り換える時に最後のチャンスがある。もう一人犠牲者を出すのはさすがに不味い」
 如月鬼堂は自分の見解を強く主張する。
 「その作戦は危険過ぎます。土曜日までには結果は出るでしょう」
 館山弁護士は含みを持っているがそれ以上言わない。
 「そうだな」
 「この先の愛好会の予定が決まっていません」
 館山弁護士は話題を変える。
 「まだ難しいだろ。もう暫くオンラインだな」
 「そうですか」
 館山弁護士は引き下がる。

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