【SadoのSM小説】
最期のSM小説家
第十五幕


怨念の挽歌


この物語はフィックションであり実在の人物機関とはなんらかかわりがありません。
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 二〇二十年白露上元。太陰太陽暦八月四日。
 (この二十四節気は平気法によるものです)
 二〇二十年九月二十日。
 如月鬼堂は珠洲と瀬里菜を伴って最終の上越新幹線グリーン車で越後湯沢に着いた。
 全裸美人コンテストのスタジオ収録が終わっての帰宅である。全裸美人コンテストは本多椿が優勝した。
 東京から僅かな距離だが駅でビールその他を購入した。珠洲と瀬里菜も飲んでいるので駅から運転代行を頼んである。
 愛好会のショーは来週二十五日にした。四連休はパスしたのである。金曜日の夜に始めて土曜日の朝まで続ける。
 土曜日にやりたいが如月鬼堂の都合が開かない。
 如月鬼堂がインターネットアダルト放送の出演が土曜日の夜だからである。これを如月鬼堂が欠席すると視聴率が一気に下がる。
 大方のマスコミがリベラル寄りに報道する。
 アメリカのマスコミは一部を除いてその傾向がもっと強い。それでも共和党の中でも特異なトランプ大統領が半数前後の得票を得る。
 支持率で民主党有利でも選挙結果は僅差か逆転する。
 仕方なくリベラルの振りをする者は多い。社会の為、環境の為と言う。だが本音は個人主義である。
 日本にはアメリカでトランプ大統領寄りに報道するようなマスコミが無い。良くて中立である。その受け皿が如月鬼堂の時間となる。
 もちろん非難する人は多々ある。アダルト放送ゆえそんな層はもとより見ることさえない。
 個人主義とのギャップが人種差別問題である。
 アメリカでは反トランプが人種差別と一体化されてしまっている。
 日本に人種差別は戦後になって概ね無い。
 アメリカに人種差別が無いとは言えない。だが警察官の過剰を超えた取り締まり行動は人種差別とはやや違う。個人主義ならこれも許されない。
 警察官の権力に従わない者に対しての強硬な職権力の行使である。そして銃使用の基準の問題でもある。
 日本でも上級国民なら取り締まりに強固な取り押さえはない。中級、一般と一気に対応は変わる。
 アメリカでも白人の犠牲者が無いわけではない。少ないのである。黒人でも上級は存在する。だが中級、一般と下がるに黒人が圧倒的に多い。
 そこで黒人の犠牲者が多くなるのである。
 共和党支持者に警察が多い。さらに銃社会の維持を唱えるのも共和党支持者。それを民主党に傾倒するマスコミが上手く利用するのである。
 
 如月鬼堂らはマンションに戻って三人一緒に露天風呂に入る。
 ようやく夜はやや涼しくなって露天風呂は気持ち良い。高層階の露天風呂。空気が澄んで星空が綺麗である。
 珠洲も瀬里菜も疲れている。いつもの様に如月鬼堂を湯に立たせて前後ろから躰で洗ったりはしない。
 如月鬼堂は静かに生ビールを飲む。珠洲と瀬里菜は既に冷たいお茶である。
 此処は露天風呂からもテレビが見られる。
 九一○事件と極東日本銀行錦通り支店襲撃事件に関する警察の捜査は一行に進展しない。連続拉致強姦傷害事件の捜査は皆無である。
 静岡県奥地の部落からはそれ以上何も出て来ない。巫女の老婆は保護され市内のアパートを斡旋され生活保護となった。
 その後はコメンテテーターの見解と意見が延々と続いた。
 「全員特攻隊の様に自爆とかしたのでこれで打ち切りなの」
 珠洲がニュースを見ながらぽつりと言う。
 「まだ十九人の残りが居る。あの部落に居ないならどこかに潜んでいるか同じような部落があるかもしれない」
 十二名という数字からまだ何か起こると見ている。コメンテータも同じような発言をしていた。
 「連続拉致強姦傷害事件も捜査は進まないね」
 瀬里菜は九一○事件と極東日本銀行錦通り支店襲撃事件が強烈過ぎて前の事件が追いやられていると気に成っていた。
 「犯人が狡猾過ぎる。次に何か起こさない限り無理だな」
 如月鬼堂はこっちの話題が世論で大きくなってほしくない。
 女性の被害者が増えれば性暴力に対する女性側の一方的訴えが強引に通る風潮が拡大される。
 虚偽誣告に社会で男性は更に怯える事になる。
 アダルト動画を見る。ソープランドに行く。更にSMクラブに行くなどの男性が痴漢や生暴力では犯罪者と決め付けられてしまう。
 ソープランドやSMクラブに行く男性はそっちの犯罪には走らない。あくまで合法で遊んでいるのである。
 そして新型コロナで追いやられる風俗、売春が更に追い詰められる事を恐れる。如月鬼堂にとって風俗売春は社会秩序に必要不可欠な存在である。
 この手の犯罪は解決ではない。小説、ドラマの中以外に絶対に起きてほしくないのである。
 埼玉路線バス女性運転士集団強姦事件ではいま起訴されて控訴審中の六人。これが犯人でないとは如月鬼堂には言えない。
 だが一審無罪。本来一審無罪となったら釈放のままなのである。だが再拘留となった。野崎卓郎弁護士はこれに強く怒っている。
 被害者の原直子運転手から顔が見えず確たる特徴の指摘もない。それながらもこの人達だという供述がなされた。本人の思い込みが総てである。
 それだけで起訴され一審無罪でも再拘留となった。疑わしきは罰せずの法律の根本精神はまったく無視である。
 
 此処は名古屋市千種区今池。錦、東新町と下り更に場末である。
 居酒屋の二階を借り切っての宴会らしきが行われている。全部で十一名である。内七名は銀行爆破強奪事件に加担した。
 「もう山に帰れなくなったな」
 四十くらいの男である。
 「いつ踏み込まれるか分からない」
 三十代くらい痩せ型インテリ風の男である。
 「奴等は三十三億残してくれた。どう闘うかだ」
 一番年嵩な男の発言である。
 「大田が残した一億だけだったのが一気に増やしてくれた」
 「随分派手にやってくれたな」
 「次は難しいよ」
 「金を作る必要はない。何処をどう狙うかだ」
 年嵩な男の発言である。
 「何処を狙う」
 「今度は大田の意志を次いでやろう」
 年嵩な男の発言である。
 「そうだな。他に妥当な報復は無い」
 「ならばこの作戦でどうだ」
 年嵩な男の発言で全員の意見が一致した。
 
 十一人はそのままラブホテルに移った。
 団体で使えるバンケットルーム。SMにも対応する造りである。
 其処に二人の女が待っていた。部落を出て来た。二人とも二十代半ばくらいの容姿である。どちらも小柄で可愛い。
 「真帆、瑞帆。今日で最後だ」
 年嵩の男が宣告する。
 「お前らの戸籍も買い取った。このホテルも居酒屋もこれから二人の共同経営だ。法人ごと買い取った。家も用意した。総て名義も書き換えてある」
 四十代くらいのサラリーマンタイプが説明する。
 「年齢は三つくらい上になる。これがその謄本だ。運転免許証とパスポート。転出を重ねて用意したものだ」
 三十代くらいの痩せ型の男が続いて説明する。
 「ありがとう」
 瑞帆が小さな声で礼を言う。
 「うん。ありがとう。嬉しい」
 真帆である。
 「これからは二人で力を合わせて此処を経営して行け。俺達の事は今後一切触れるな」
 「一億ほど現金は残してある。確り洗浄して会社の口座に入れた」
 二人は静かに頷く。
 「今日は最後にわしらに愉しませてくれ」
 「うん。良いよ」
 「良いよ」
 女二人は了解する。
 これまでも部落の中で太田を含む十二人の性処理の相手をしてきた。
 真帆からホテルルーム備え付けの拷問椅子に磔る。真帆は部落での通称である。生まれて間もなく部落に収容された。
 その時に居た巫女が育て仮の名を付けたのである。
 全裸で股を百二十度に開かれている。
 「今日が最後だ。お前の美しい部分を皆に見納めさせてくれ」
 一番年嵩の男が指で真帆の女の部分のびらびらを広げる。
 「ああ」
 「綺麗だぞ。縁はまだドドメ色に成ってない。紅がやや小豆に成っているが中は綺麗な緋色だ。尿道の亀裂も可愛い」
 「いやああ」
 真帆は泣きそうな表情を硬くして堪える。
 更にクスコを挿入する。
 「皆。姫の奥の院を見納めだぞ」
 年嵩の男はクスコの螺子を回して中を広げる。それをペンライトで照らす。
 「あ、ああ、ああ」
 真帆は目を強く瞑り顔を火照らせて堪える。
 次はクスコを抜いて十一人が一人ずつ挿入だけする。
 年嵩の男がドリルバイブを取り出す。それを若い男に渡す。これもルームの備え付けである。
 「今日はお前らにとことんイッて貰う」
 一番年嵩の男が宣告する。
 「はい」
 真帆はまったく逆らわない。全員の目がスポットライトに照らされた全裸の躰を隅々まで見ている。
 年嵩の男が真帆の女に指を入れて濡れ具合を確認する。
 「良し」
 既に真帆のその部分は充分に塗れていた。
 若い男がドリルバイブの先端に装着した擬似男根を挿入する。
 「ああ」
 スイッチが入る。
 「あはあはあーーーーーーーーーーーーーーーー。あーーーーーーーーーーーーーーーー。あーーーーーーーーーーーーーー」
 真帆は躰を拷問椅子の上で突っ張り迫り上げた。顔の表情は大口を開けて破裂している。
 「ぐおおーーーーーーーーーー。うおおーーーーーーーーーーーーーーーー。ううおおーーーーーーーーーーーー」
 真帆は躰を突っ張ったまま首を右に左に捩って唸り声を上げ続けた。
 更に電マでクリトリスを刺激する。
 「ああーーーーーーーー。だめーーーーーーーーーー。だめですーーーーーーーーーーーーー」
 それでも追い討ちを掛けるように責め続けた。
 「あはあーーーーーーーーーー。だめーーーーーーーーーー。もれますーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
 真帆は断末魔の言葉を絞り出す。
 「出せ!みんな見たいのだ」
 「ああーーーーーーーーーーーーーーあーーーーーーーーーーあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
 真帆はサイレンの様な悲鳴を上げ続ける。そして潮が弧を描いて空中に噴き上げた。
 「ああーーーーーーーーーーーーー。だめーーーーーーーーーー。とまらないーーーーーーーーーーーー」
 電マを充てていた男もドリルバイブを持つ男も体を交わして責め続ける。
 「ああーーーーーーーーーーー。ああーーーーーーーーー。またいくーーーーーーーーーー。いくうーーーーーーーーーーー」
 真帆は女の性をとことん曝け出して逝き顔を皆に焼き付けて失神してしまう。
 瑞帆もこの後同じ様に責められた。
 現在十一人は名古屋市内のアパート、マンション、ビジネスホテルに居住地を点在している。
 
 警察もここまで事態が深刻に成ると捜査はそれなりに進展した。愛知県の山奥に立ち入り禁止の部落を発見してSITの部隊が捜査に進行する。
 愛知県と雖も奥は深い山林である。
 静岡県との境にやや近い。
 車で入れない山道を二時間以上進む。廃墟の集落を幾つも過ぎる。殆んどが朽ち果てていた。
 江戸時代から存在した様な集落である。途中は最近人が通ったとは思えない道が続いていた。
 更に奥に進んで朽ちているが鳥居らしきを幾つか潜る。最近まで人が居たと思える集落に着く。
 どの家も綺麗に整理されていた。静岡と同じ状況である。
 パソコンも発見された。同じように玉抜きされている。HDDの中身は溶解処理されていてデータは読めない。機械類は運び出されている。
 この部落を捨てた事は明らかである。
 巫女らしき女性の衣装及び女性が暮らしたと思える住居も見付かった。社らしきも存在する。今度は女性の姿は無い。
 またもや機械をどのように運び出したか。この部落からどのように出入りしていたか謎である。
 
 九月二十四日木曜日。越後湯沢。如月鬼堂の居間である。
 明日の夕方からの愛好会のショーの打ち合わせで主なメンバーが集っていた。
 大河内税理士、館山弁護士、福富麻次郎、杉下一行、本多椿、熱海の店長荒井枝里である。
 今回杉下一行が生駒で福富麻次郎が長野で如月鬼堂が熱海でプレイを担当する。本多椿が熱海で全体の司会である。
 他は館山弁護士が生駒に大河内税理士が長野に行く。
 裏の全裸美人コンテスト同様三箇所の店舗のステージに三名が登場する。一人を除いて他からのバーチャルである。
 杉浦瑞樹が熱海、倉科香李名が生駒、大路江美が長野と決まっていた。
 「五百二十三名。なんとか生駒に一列増やしてOKですね」
 「この先どうするかだ」
 大河内税理士の安堵の発言に如月鬼堂は増える会員を心配している。
 今回これでも欠席者が二十一名居た。
 既にビールが注がれている。昼は仕出し屋がミニ会席を運んで来た。割烹料理店は休みである。
 テレビのワイドショーでは銀行爆破強奪事件に加担した残り七名が隠れ住む集落を警察が発見して進行した状況を報じていた。
 「次は何を狙ってきますかね」
 如月鬼堂が考えていた疑問を投げ掛ける。
 「部落を離れていれば何か計画があるのでしょう」
 館山弁護士も直ぐに動くと予期していた。
 「もう金を確保する必要は無いですね。直ぐに動くのでは」
 大河内税理士も同意見である。
 「近日中に何が起こるか」
 如月鬼堂もそれを予想していた。
 「もしかして新幹線。危険では」
 大河内税理士は明日の移動を心配する。
 「それは低いでしょう。この犯人は不特定多数を目的にはしていません」
 館山弁護士はそれを否定した。
 「その前にまた女性を襲うかもしれない」
 珠洲が懸念を持って意見を差し挟む。
 「またやりそうですね」
 荒井枝里もそっちに懸念を示す。
 本日は全員が此処に泊まる。
 翌朝高崎と東京で分かれて三つの店舗に向かう。
 
 二十五日金曜日。二十時を過ぎて静岡県警捜査一課の竹田玲奈巡査長は勤務を終えて帰路についていた。
 一人が後ろから接近して胸を触って逃げる。
 「こらあーー」
 竹田玲奈巡査長は直ぐ追いかけた。
 男は路地に逃げ込む。竹田玲奈巡査長はそれを追う。捕まえる自信は有った。
 二つ目の路地を曲がった所で六人が囲む。クロロフォルムを嗅がせてしまう。一瞬で竹田玲奈巡査長は意識を失う。
 直ぐ其処は空き家である。其処に連れ込む。麻酔を強化して着衣のまま高手小手に縛る。さらに脚首を縛り合わせ膝も縛り合わせた。
 そのまま竹田玲奈巡査長をキャリーバックに詰める。
 後からパッカー車が迎えに来た。その中にキャリーバックを突っ込んでしまう。上から空き家に先に用意してあったゴミを投げ込む。
 静岡側から警察が踏み込んだ山奥の集落に向かう。警察が進行した逆の道からである。
 前路に二台。後方に一台ワンボックスカーが警戒しながら進む。
 パッカー車が辛うじて通れる林道を山奥に進んだ。
 行き止まりに民家が一軒建っている。後ろも正面も崖である。
 パッカー車の他にその前後を走っていたワンボックスカー二台が民家の裏に止まる。
 民家だが地下室が存在した。その地下室は山の中の鍾乳洞に繋がっている。
 此処で竹田玲奈巡査長をキャリーバックから出す。そのまま全裸にして躰をもう一度高手小手に縛る。
 蹴りができないように脚首と脚首を五十センチの棒で繋いだ足枷を履かせた。
 スタンガンで竹田玲奈巡査長の意識を回復させる。
 「うおおーーーーー」
 竹田玲奈巡査長は意識を回復して叫ぶ。囲んでいる全員を見回す。直ぐに全裸で縛られている事を悟る。
 「何よこれ」
 竹田玲奈巡査長は自分の躰を視線で指す。
 「立て。これから俺たちの部落に案内する」
 「服の上からおっぱいに触られたくらいで追いかけなければこんな事に成らなかったのにな」
 男は嘲笑っている。
 「部落」
 竹田玲奈巡査長はその一言で恐怖に包まれた。
 「お前ら警察の機動隊が侵入した部落だよ」
 「ああ」
 竹田玲奈巡査長は事態を完全に悟って驚愕の表情になる。
 「警察機動隊が進入したのとは別の入口からな」
 「貴方たち何でマスクとかサングラスしてないの」
 竹田玲奈巡査長はこの連中は自分を殺すと確信した。
 「よく気付いたな」
 「私を殺すの」
 「いいや。お前は生き証人に成ってもらう。死ぬのは俺たちだ。お前を人質に沢山の警察官を道連れにな」
 「な、なんと」
 竹田玲奈巡査長は計画の恐ろしさに驚愕する。飛行機とタンクローリーで建物に突入したテロ集団である。
 「さあ。立て。ゆっくりなら歩ける筈だ」
 若い男が移動を促す。
 「移動しながらお前の知りたい事をゆっくり説明してやる。深い傷心を抑えてテレビの前で語れば良い」
 年嵩の男が宣告する。その静かな言葉は竹田玲奈巡査長を恐怖のどん底に落とした。
 恐ろしい拷問が目の前に迫っているのである。
 地下室から鍾乳洞の入口に入る。其処に大きなタイヤを履いた装甲車の様な車両が止まっていた。
 後ろに箱車を繋いでいる。
 運転者以外そっちに乗った。
 かなり大掛かりな洞窟である。装甲車は蛇行しながらその中を進む。
 大きな池の辺を更に奥に進み続ける。
 「これがこの部落の水源だ。警察はただの湧き水か井戸と見ていたようだ」
 年嵩の男は淡々と解説して行く。
 やがて大きく天井部が開いて夜空が見えるところに来る。
 「見ろ。あそこから大きな荷物を部落に上げるのだ」
 「どうやって」
 「まあ。後でお見せするよ。大きなクレーンが有るのだ」
 「そんな物。警察は発見してないですね」
 「警察が踏み込んだところには無い」
 そのまま装甲車は奥に進む。やがて行き止まりに達した。装甲車で行けるのは此処までである。
 其処には同じ装甲車がもう一台止まっていた。
 チェーンで吊るされただけのエレベーターの本体。そのように見える鉄の箱が止まっている。
 「あれで上に上がるのや」
 「荷物は」
 「大きな荷物は殆んどこっちには上げない」
 「なら人だけ」
 「人も殆んど上がらない。此処は監視所だ。通常はさっきの穴から吊るしのケーブル車で出入りする」
 「だから警察が通った道に人が通った形跡がなかったの」
 「あれは獣道だ。まったく使ったことは無い」
 「静岡はどうやって上げたの」
 「あれは此処より単純だ。カタパルトが有った筈だ。あれがクレーンにもなる。真下の行き止まりの道から吊り上げる」
 そんな間に箱は頂上に着く。
 降りると其処はトーチカである。五十ミリくらいの大型の機関銃が三機設定されている。
 其処には拷問部屋も準備されていた。
 其処から部落の全容が見下ろせる。更にその先には部落を囲む連山と渓谷や峠が見渡せた。
 「これは五十ミリ機関砲だ」
 既に人を狙う機関銃ではない。B17やB29に搭載したクラス。ジュラルミンの盾など無力である。
 此処から登って来た警察部隊を狙えば完全に殲滅できる。
 「よく見ろ。二つ此処と変わらない山が在る。あっちにもトーチカが有る。警察は相当の部隊を失う」
 三方の山から部落を銃撃すれば殆んど殲滅されてしまう。
 「あ、ああ」
 竹田玲奈巡査長は驚愕の表情を凍らせていた。奈良県で警察官が何人も殉職したばかりである。
 「あの飛行機は」
 洞の奥に飛行機が格納されていた。
 「よく気付いたな。あれは最後に此処から都庁に向かう。爆弾を抱いて」
 「ああ。いったい何の為に」
 竹田玲奈巡査長は恐怖に慄きそう叫ぶ。
 「大田が声明した通りだ」
 「あの時突っ込んだのが大田。それじゃ奈良は」
 「知らんよ。お前ら警察の過剰捜査が犯罪者を増やしたのだ」
 年嵩の男は嘲る様に静かに非難の篭った口調で言う。
 「そんな」
 竹田玲奈巡査長は驚愕の震えが止まらない。
 
 愛好会のショーは熱海を中心に三会場で進められていた。
 熱海のステージには杉浦瑞樹が居る。
 三会場とも同じ状況である。
 「これからドリルバイブデスマッチです。早く失神した順に重い罰が下ります。内容は後から投票で決定します」
 本多椿が熱海のステージで三会場にアナウンスする。
 本多椿はバスロープを脱ぎ捨てて全裸である。先週の全裸美人コンテストで剃毛されてドテの黒い塊は無い。
 杉浦瑞樹はドリルバイブを見て驚愕の表情に成る。


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