SadoのSM小説
女衒の國

この物語はフィックションであり実在の人物機関とはなんらかかわりがありません。

潜入婦人警官

1| 2| 3| 4| 5| 6| 戻る|
 「や、やめてーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。だめーーーーーーーーーーーーーーーーーー。だめ。」
 真紀子は固定された躰をガタガタ揺すって喚き散らす。
 「だめーーーーーーーーーーーーーーーーー。だめ。だめ」
 半狂乱である。
 安形はピンセットでクスコに近付ける。
 「ああーーーーーーーーーーーーー。ああーーーーーーーーーーーーーーーー。あ、ああーーーーーーーーーーーーやめてーーーー。があーーーーーーー」
 恐怖の形相で躰をガタガタ揺すり半狂乱の叫びである。
 「おねがい。おねがいーーーーーーーーーー。やめてーーーーーーーーーーーーー。だめーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
 安形はピンセットを遠ざける。ニコニコ笑っていた。
 真紀子の表情は恐怖に慄いている。
 「ああはああん。ああはん。あはん。あはん」
 遂に気丈な真紀子が泣いた。
 安形は実に嬉しそうである。
 「やっと君の涙を見られたな」
 「ひどおい。泣かしたかったから脅かしだったの」
 「うーん微妙。反応が無かったら」
 「えーーーーーーー、いれたのーーーーーーーーーーー。ひどーーーーーーーーーーーい。もーーーーーーーーーーー。いや。いや」
 「はっはっはっは。まあまあ」
 「いやあはん。あはん。あはん。もういや。もういやーーーーーーーーーー」
 安形は蝋燭に火を点けた。
 真紀子の顔にまた恐怖の表情が奔る。
 安形の手で蝋涙はクスコの中に流された。
 「うあああーーーーーーーーーーーーーーー。あああーーーーーーーーー」
 真紀子は劈き通すような悲鳴である。
 「ああはあーーーーーーーーーーん。ああはあーーーーーーーーーーーーん。あはあん。あはあん」
 完全に半狂乱である。
 安形はさらに流し込む。
 「あああーーーーーーーーーーーーーーー。ああーーーーーーーーーーーー」
 真紀子は失禁してしまう。クスコの上の尿道口から尿が流れ出す。クスコの横を伝ってお尻から開帳台に流れて行く。
 「あはああん。ああはん。あはん。あはん」
 半狂乱に泣く真紀子のぐちゃくちゃの顔は実に加虐心を満足させる。
 安形はすすり泣き続ける真紀子に追加のオプション料金とチップ合わせて二十万をくれた。
 真紀子は露天風呂で泣きながら膣を洗う。痛みの癒しにも露天風呂が良い。
 真紀子も安形も疲れから死んだように眠ってしまった。
 翌朝は客室係のコールで起きる。朝食の確認である。
 「真紀子さん。朝飯どうする」
 「ご一緒で」
 「和食、洋食、どっちか決めてよ」
 「ご一緒でいいです」
 「どっちか決めてよ」
 「それじゃ、和食で」
 真紀子は回復しない体力で辛うじてシャワーを使う。
 安形は露天風呂で放心していた。
 朝食は和室でもワゴンで運ばれる。折りたたみ椅子がセットされていた。
 現地人に和食が作れる。仁川の厳しい指導からである。
 仁川は厳しく現地人を躾る。基本的に日本化がこの島の倫理である。今では日本より昔の日本そのままに成っていた。
 「ねえ。労働基準法を昭和三十年代に戻すと誰か言っていたわね」
 「昭和三十年はオーバーだが雇用機会均等法ができる前に戻す必要がある」
 朝でも茗荷と味付海苔の味噌汁が出る。赤味噌に赤出汁を加えた物である。
 「そこから直したら女性の権利が認められたのが悪いみたいじゃない」
 「女性の権利じゃないよ。女性の追加特権だよ」
 「どうして」
 「女社長は法律に守られなくても男より強くやっているじゃないか」
 「それと勤めている人は」
 「違う。女社長は大概初代だ。自分で切り開く事の方が大変だ。ほんとに会社の発展を考えて使える女は男を抜いて出生しているよ」
 「でも女は育児があるのです」
 「それがいかんのだ。男と同じ出世を求めるなら育児は捨てるべきだ。女社長は大概が家庭は捨てている。または家族が代行している」
 「でも男は育児を負担しなくていいじゃない」
 「関係ないよ。夫婦の間でどっちがやるか決めればいい問題だ。両方求めて育児休暇まで貰って貢献は程々にして出世は同等にさせろ。その負担は企業に求める。だから企業は派遣、全面外注に切り替えるのだ。それが堂々と成り立つのは税金を無駄遣いしている役人くらいだ」
 「どうしても企業は言い分を通すのね」
 「違うよ。そうでなければ成り立たない。官と民の金の使い方を見れば解る事だ。官のやり方では利益は出ない。厚生年金の投資が総て失敗に終わるのも、公共の宿が赤字経営になるのも、民営化が必要になるのも一貫した問題だ」
 「何となく解ってきた。日本が企業の自由な運営に任せない限り、そして企業が正しい判断をしない限り、日本の労働者によい社会は来ないわけね」
 「そうだ。そして規制や直接税を止めない限りどんどん本社が外に出て行って空洞になるだけだ」
 「解った」
 「近い将来に多国籍企業と国家の地位が入れ替わる時代が来る」
 
 真紀子はこの二日間でオプション収入をたくさん得た。此処にいる限り殆ど金は使わない。
 順調に行けば月十日で四百万。二十日で八百万。十ヶ月で八千万は解消出来る。その時点で借金を返しても三千万以上自分の手元に残る。
 その日はパーティの会場に呼ばれた。
 新日本空輸ホテル。R国内の日系ホテルに出張する。
 二十名ほどの会社の出張旅行だった。男性十名は日本人。女性はこの会社がR国に置く本社の現地社員である。
 殆どが日本との混血であり全員日本語が話せる。
 制服ながら少し前の良き時代だったMハンバーガーショップ並みのミニスカートでさらに前ボタンのワンピースである。
 色は薄いピンクながら下着は形がわかる程度に透けていた。
 男子社員と女子社員というよりは宴会場のコンパニオンにしか見えない。既に会場内はセクハラ以前の状態である。
 ディープにキスされている女性。スカートに手を入れられている女性。胸に手を突っ込まれている女性も前のボタンを外されてしまっている女性もいる。
 株式会社パン・ボリビア。日本ではハードコンパニオンの派遣を行っている。この会社から日本支社には芸能人として派遣される。
 温泉の宴会場でハードSMショーを行う。だが歌も歌うので歌手である。
 真紀子はこの中央の広場に牽かれて来た。
 社長ともう一人で拷問を行うようである。緊縛師は居ない。
 真紀子の真赤なワンピースは肩のボタンを外された。もう片方の腕を抜き取りするりと床に落とされる。
 ブラも外されショーツも丸めて下ろされてしまう。抵抗せず脚を抜き取る。全裸である。
 本来十名以上は一人五千円の上乗せである。だが女性はカウントされない。
 真紀子には嬉しくない。基本料金のみである。
 社長の顔は何故か見覚えがあるような気がするが思い出せない。
 もう一人が真紀子を後ろ手に縛る。縄は乳房の上下を回して胸部を固めた。
 台車で十露盤板が運ばれる。
 パーティの席に着いてない現地女子社員が運んで来た。完全な現地の女性である。
 席に着いている女性と比べると雲泥の差と言える。
 油圧式台車で平たい御影石が運ばれる。石抱きの拷問のようである。
 社長は竹刀を持っていた。これで叩かれるらしい。
 十露盤板は四角い角材が角を上に向けて僅かに数センチ隙間を空けて五本並んで打ち付けられいた。
 角は鋭利ではない。多少は鑢が掛けられている。
 絨毯の上に角を折り曲げ周囲が僅かに柵になった鉄板が敷かれその上に砂利を敷く。そこに十露盤板を載せた。
 社長は真紀子の躰を引く。押し付けるように十露盤板に座らせる。
 抵抗などできない。押されるがままそこに正座する。
 座るだけでも痛い。向う脛に十露盤板の角が食い込んでそこに体重が掛かる。
 社長が膝を踏みつけた。片足体重を掛ける。
 「ああはあーーーーーーーーーーん。いーーーーーーーーーーーーーー痛い」
 背中から抱きつかれ乳房を揉まれた。
 「うううーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
 体重が掛かるともろに痛い。
 頭を後ろに倒され膝にお尻が乗る。
 「ああはあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん」
 痛みの真っ只中で唇を奪われてしまう。痛みに歪む口を強引に吸われる。
 社長の合図でもう一人の若い男と現地の小太りの女性が石を運んで来た。かなり重そうである。
 真紀子は恐怖の表情に成った。
 ゆっくりと慎重に膝に載せる。
 「ああううーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん」
 折った脚全体に痛みと圧迫が同時に奔った。
 「ああううーーーーーーーーーーーーーん。うううーーーーーーーーーーーーーーーーん。ううーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん」
 俯いて顰めた顔を捩り更に躰も捩り搾り出すように呻き続ける。
 一個で顔は般若の形相である。苦しさに躰全体が震撼していた。
 真紀子にはこの拷問は始めてである。
 石一個でも社長が乗るより苦しい。
 バシャーン。竹刀で両方の乳房を叩かれた。
 「ぐふうーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん」
 真紀子は涙目で社長を見上げる。行き成り乳房に来るとは思ってない。
 「うぐううーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
 痛みは叩かれた乳房と十露盤板に乗っている向う脛にも来た。
 社長の目付きが異常に据わっている。何故か不気味である。どこかで見たようで思い出せない。
 現地人の女性と若い社員はまた石を持ち上げる。この女性は力以外に何の取り得があるのだろう。
 美しい真紀子を妬み潰す如くに感じ取れた。
 石が真上に来る。やめてと叫びたいが場の雰囲気がそれも留まるしかない。
 カスッと音がして石が重なった。真紀子の躰全体が震撼する。
 「あううーーうーーーーーーーーーーん。あうぐうーーーーーーーーーーーーん。あううーーーーーーーーーーーーん。あうーーーーーーーーーーーん」
 太腿に強烈な圧迫感が来て向う脛に刺さる痛みが痛烈である。顔を振り絞るように鈍痛な悲鳴を搾り出す。
 真紀子は骨が砕ける錯覚さえ覚えた。痛みは完全に太腿と向う脛を強烈な圧迫力で挟んでいる。
 圧迫から逃れる術もなく躰を軋ませ顔も異常に軋む。
 パアーーーン。
 社長の竹刀がうなじの下を叩く。
 「う・・・・・」
 真紀子は殆ど声も出ない。涙は溢れ出る。髪は乱れていた。目は何故か無駄と判る慈悲を訴えている。
 三つ目の石を二人が持ち上げた。若い社員の目は少し哀れんでいるが女性は全然かまわぬと言う表情である。
 真紀子は絶体絶命に成った。
 「ぁぁぁぁぁぁぁぁーーーん」
 掠れた声で搾り出すような悲鳴である。
 現地人女性は若い社員を押すように真紀子の真上に石の位置を合わせてしまった。
 ガスッ。鈍い接触音で石が載せられる。
 「ぐうううーーーーーーーーーーーーん。ぐうーーーーーーーーーーん。うううーーーーーーーーーん。うぐーーーーーーーーーーーーー」
 真紀子は乳房も顔も躰を石に擦り付けるように藻掻く。
 社長は真紀子の髪を掴んで首を上げる。
 ビシャーーーン。行き成り平手打ちが来た。
 「ぐ」
 真紀子は殆ど声も出ない。目に睨み返す気力もなかった。情けなく涙が零れている。
 仕事とはゆえ女優の演技ではない。男女混じった大勢の前で顔を叩かれるのは惨めさの極致である。
 叩かれれば十露盤板に石で押し付けられた向う脛が軋む。斬れるような痛みが襲って来る。
 ビシャーーーン。
 社長からまた平手打ちが来た。社長の表情が憎しみを湛えて歪む。
 憂さを晴らすより恨みを晴らす表情である。
 「ぐうーーーーーーーーーーーーーー」
 涙はぽろぽろ零れる。
 それでも容赦なく連打して来た。
 「ああ。があーーーーーー。がああーーーーーーーー。ああーーーーーー」
 真紀子の顔は真っ赤である。
 社長は小気味よさそうに見ていた。
 真紀子の涙はとめどなく零れる。向う脛の痛烈な痛みと悔しさに脳裏は真っ白である。
 口の中はすっぱく惨めさがとめどなく去来する。
 社長が竹刀を構える。前からである。
 「・・・・・」
 叫び声も出ない。恐怖に顔は引き攣る。
 パアーーーン。
 石の直ぐ上に丸出しの両方の乳房を同時に直撃した。
 「ぐ、ああ。あ、あはあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
 社長はホテルのルームキーを持つ。五センチくらいあって四角いプラスティックの付いた古いタイプである。このホテルの物ではない。
 二つ折りに重なった脚の太腿と脹脛の間を裂くように擽りを掛ける。
 「ああだめーーーーーーーーーーー。ああは、あは、あは、ああは、あはあーーーーーーーーーはん。あはあはあはあーーーーーーーーーーーーーーーん」
 真紀子は狂ったように声を上げた。
 竹刀叩きと交互に襲って来る。
 ついに失禁してしまった。小水は十露盤板の下から敷き詰めた砂利に徐々に染み出て来る。
 何発か叩いて真紀子の顔色を見て社長は石を退けるよう指示した。
 躰を持ち上げられるが足腰は立たない。十露盤板から逃れて砂利の上にお尻を着く。
 そのまま砂利の上に寝かされた。
 折った脚の脛には十露盤板の筋が五本痛々しく真っ赤に刻んでいる。
 僅かに一部血が滲んでいた。乳房も赤く内出血している。
 開放されても痛烈な痛みが真紀子を襲い続けた。
 社長は真紀子の無防備な膣口に大きな漏斗を差し込む。
 宴席から女の子を一人引っ張って来る。
 下着を脱いで真紀子の顔を跨ぐように指示した。
 「口を開けろ」
 社長は真紀子の口に無理やり開口器を突っ込む。嫌でも応じるしかない。
 女の子は頭の方から跨いでその女陰が額の上に来ていた。
 「小便を出せ」
 女の子は困っている。
 男子も引っ張って来た。
 漏斗を指差す。
 「ここに小便をしろ」
 女の神聖な穴に漏斗で小水を流し込もうというのである。
 どちらも緊張して出ない。男性は女の子のその部分を見詰めている。
 女の子は顔を俯むせに恥ずかしそうである。
 真紀子は目をきつく瞑って堪え続けている。
 男性が先に出した。漏斗は直ぐに溢れる。そして砂利と真紀子のドテを濡らした。
 満タンでも漏斗に残った小水は徐々に膣に入ってゆく。膣口から溢れて一条会陰からアナルを伝って流れ出る。
 男性が離れると女の子が放尿を始めた。
 真紀子の顔を直撃である。生ぬるく臭いも堪らないがきつく瞑った目の窪みに溜まる。そして口に流れ込む。
 全員一巡したところで石を運んだ女が跨る。今までの誰よりも臭い。小水は顔を横にずらして流し出しても口に残っていた。
 その上から混ざるように流れ込んでくる。
 気の狂うような状況である。
 この女はこともあろうに屁まで掛けていった。液体も混ざっているように感じた。
 社長はぐったりした真紀子の顔と躰をバケツの水で洗い流す。
 口の中にも流し込む。真っ直ぐ受けて顔を横向けて流す。多少は薄れても到底不快感は去らない。
 社員二人がぐったりした真紀子を担架で運び出す。
 用意されたルームに運び込まれる。
 「明日の十一時のアウトまでに帰ればいいから」
 そう言い残された。
 真紀子は嗽をしたいが洗面に立って行けない。
 這ってバスルームの扉を開けた。幸いシャワーが低い位置に設置されている。バスタブの横である。
 バスタブの中に腕を入れて上体をバスタブに乗せてシャワーの湯で嗽をする。
 気が狂いそうな拷問であった。
 バスタブに上体を乗せたまま湯を出す。
 お湯で痛みを癒そうという考えである。
 何日か休業に成る。脚の痕は無残。数日は消えそうにない。
 堪らない客である。本日はオプション十万。指名料二万追加のみで明日からは基本保障のみとなる。
 バスタブで躰を癒し数時間経ってやっと立つ事ができた。
 辛うじて躰を拭いてバスロープを纏う。そのまま寝台に躰を横たえた。
 完全に泣き寝入りである。悔しさにとめどなく涙が出る。
 翌日はぎりぎりにチェックアウトした。放心した状態のまま頭は怒りにむかむかする気分でフェリーに乗り込む。
 見るもの凡てに怒りを覚える心境である。
 娼館島の寮に戻ると管理人から計算書と予約通知を渡された。
 五日の休業補償。六日目の同等の予約。傷が癒えなくても同じ予約者ならば問題ないルールである。
 これでは生殺し。割が合わない。憤懣やるかたなきである。
 だがさらに予約者の名前を見て驚愕した。
 村上稔。やっと社長の顔から昔を思い出した。真紀子が高校生の時に電車内の痴漢行為で訴えた男である。
 その後の裁判で痴漢行為には当たらないと無罪に成った。
 確かに躰が後ろにへばり付いていただけである。男性器が起っているように感じた。
 今の真紀子ならばその程度で訴えはしない。躰が動いたり不自然な行動をしたりしていた訳ではない。
 周りが女性で生理的に起つのは已むを得ないのである。
 高校生の真紀子には周りやマスコミの唱える痴漢行為の情報に簡単に痴漢と決め付けてしまった。
 無罪になったが村上は会社を退職したのである。
 それから八年経つ。
 裁判で無罪を主張する村上の表情。昨日竹刀で真紀子を叩く村上の恨みのこもった表情。
 ただ事では済まされない。
 五日ごとに昨日のような責めをやられたら逃げ出すか海に身を投げるしかないかもしれない。
 逃げても組織の女衒に必ず捕まる。
 此処のルールで客は選べない。絶対絶命である。
 
 その翌日。休業と知ってか仁川から呼び出しが掛かった。
 午後の二時頃に仁川の住む母屋に向かう。まさかスラックスでは行かれない。濃い目のストッキングで傷痕を誤魔化した。
 「どうだ仕事辛いか」
 「えーまあ」
 「あまり顔色良くないな」
 「大丈夫です」
 「そうか。かなり稼げているのじゃないの。上手く行けば年内にフリーに成れるんじゃないのか」
 「はい」
 「何か目標でもあるか」
 「出来ましたらこちらで五千万くらい作って独立できればと」
 「何か決めた仕事があるのか」
 「いいえ。ブティックか何か」
 「安形に会ったよ。あんたを気に入っていたよ」
 「そうですか。ありがとうございます」
 真紀子は安形と聞いて少しほっとした。安形もかなりハードである。だが村上の顔が脳裏を離れない。
 「俺を手伝わないか。金は貸す。儲けさせるよ」
 「え」
 「確かにな。ここまで来るには納得の行かない部分もあると思う。だがこの家業に身を投じてくれたからには必ず儲けさせる」
 仁川の厳しい表情にはある種の信頼感がある。それは此処に来て真紀子が自然に感じ取ってきた感覚であった。
 売春に身を投じればきっちりその報酬を払う。将来資金を持ってみなこの島を出て行く。
 この仕事をこなせばそれ以外は総て便宜を計らってくれる。
 強大な資産と経営能力を持っていた。亜細亜全域にその影響力がある。
 「日本でいま普通に商売を始めても苦しいだけだ。最早、落ちてゆく経済大国だ」
 「・・・」
 「最下層に金が行き渡らない。そして最下層に落ちる人間は増えてゆく」
 「何故ですか」
 「日本は既に指導者を失った国だ。民事党でも国民党でも壊れた下駄の右か左の違いだ」
 「それはなんとなく」
 「今の恐慌から少しは上向くと思うが昔の日本のように良くはならない。どんな政治家が立っても日本は経済的に良くはならない」
 「何がいけないのですか」
 「民主主義がいけない」
 仁川の表情は真正面の海を見ている。何も揺らぐところはない。
 「多数意見で労働者、主婦の言い分が総て通る。民事党でも国民党でも主婦の意見を尊重しなければ選挙に勝てない。労働者階級、主婦層の論理を通してできたのが税金で給料を払う役人にしか成り立たない、雇用機会均等法、育児休業だ」
 「それで企業は派遣や外注に切り替え最下層の就業条件がさらに悪くなり、最下層が徐々に確実に増えてゆくのですね」
 「そうだ。そして最下層が買わなければ成らない物さえ買えない。これが購買力を低下してさらに値が下がる。値が下がれば最下層の待遇はさらに下がる」
 「それでも企業は身を護るしかない」
 「海外に本社を置く。その最たるものがアダルトサイトだ。日本が作ったアダルトが海外で日本に販売される。総て国から金が逃げて行く」
 「安形さんは税制がいけないと仰っていました」
 「税制もいけない。労基法もいけない。やがて労働者の為の労基法が労働者自身を締め付けることに気付くのはどうにもならない経済的瓦礫の山に成ってからだ」
 「そう成っても、自分らを見捨てた企業のあり方が悪いと訴え続けそうです」
 「まったく。馬鹿は死んでも直らん」
 仁川は真紀子の濃いストッキングで隠した向う脛の傷を見つめたが何も言わない。




ご感想、アンケート
ご感想、ご質問、ご用件、ご依頼などございましたら以下のメールにお送りいただければ幸いです。
sado9364○yahoo.co.jp
(お手数ですが○を@に変えてご使用ください)


戻る
次頁

#カリ首