【SadoのSM小説】
最期のSM小説家
第一幕


義姉妹と荒井枝里


この物語はフィックションであり実在の人物機関とはなんらかかわりがありません。
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 飛び散る潮とアナウンサーの藻掻く躰と軋み悶える表情だけである。
 
 スタジオが跳ねた後。如月鬼堂は東京のホテルで休んで十時過ぎの新幹線で越後湯沢に戻る。
 この日は瀬里菜が迎えに来ていた。
 「凄い事件だったね」
 「ああ。運が悪いよ。下手なことを言うとアダルト放送でも大非難を食らうからな。俺の日でなければ良かったのに」
 「パパ問題なかったよ」
 「失言にならないか冷や汗ものだった」
 「珠洲がミニチアダックスを拾ってきたよ。超可愛いの」
 話を代え瀬里菜は嬉しそうである。
 「迷子」
 「多分そう」
 「飼い主に返さないとね」
 「ポスターとSNSね」
 マンションに戻ると珠洲が子犬にミルクを与えながら餌に苦慮していた。
 よく見ると首輪にアクセサリーの様に極小さなカプセルらしきが付いている。
 「これは何だろう」
 如月鬼堂はそれを摘み上げた。
 指で回す。カプセルは割れた。
 中から小さな紙切れが出て来る。
 『どなたかこの子をお願いします』
 女文字である。
 「この子棄てられちゃったの」
 「違うよ。この人はもう生きてないかもしれないな」
 「ええーー。どうして」
 「子供を棄てなければならない母親の感情が出ている。自分がもう養って行けないところまで追われたからこう書いているのだ」
 「此処で飼っても良い」
 珠洲が懇願する。
 「いいよ。この部屋を改造しよう」
 「うん」
 瀬里菜も嬉しそうである。
 「珠洲はこの子を見ていてくれ。瀬里菜と二人で必要なものを買出しに行こう。まずはドックフードだ」
 「この子抱いて一緒にいっちゃ駄目」
 「ならばそうするか」
 瀬里菜の運転で三人一緒に出発した。
 何故かミニチアダックスは如月鬼堂の膝の上である。
 珠洲がスマホで検索していた。
 「高崎まで行かないと店ないよ」
 「それじゃ新幹線で大宮だ」
 「でもこの子連れて乗れるかな」
 「駄目よ駕籠に入れないと」
 「湯沢のスーパーでもドックフードは買えるから。後は通販で買いましょう」
 珠洲の意見でそう決まった。
 業者を呼んで一室をプレイルームの床と同じように硬質ゴムに代える。
 餌の時間になると自動でドックフードが出る装置。ボトルを逆さまに取り付け水の飲み口が下向けに付いた設備を三本用意する。
 室内でも小屋を置きトイレも設置した。
 何故か躾られていてちゃんとトイレを使う。
 部屋の入口には柵をする。窓はサッシを閉めたままガラスに小さな扉を付け外に出られるようにした。
 それは壁面に付けられた個別の小さなベランダである。手すりに金網を張り落ちないようにした。
 「此処の他に東京と熱海にも同じ設備を作らないとな」
 十二月。クリスマスを過ぎると東京のマンションに移転する。正月を東京で向かえ一月末に熱海の少し先で静岡県の宇佐美に移る周期である。
 四月まで暖かい伊豆半島で暮らして越後湯沢に戻る。
 使わない時期はSMレンタルルームで会員にシュアされた。如月鬼堂らの部屋は鍵を掛けたままそれ以外をシュアする。
 越後湯沢はシュアしない。
 東京にはもう一つ長野と同じ専門シュアルームもある。
 毎年このサイクルを繰り返しである。そこに小犬が追加された。
 「この子が来てパパが一番嬉しそう」
 瀬里菜が冷やかすように言う。
 「犬を飼えるのは初めてなのだよ」
 「そう。よかったね」
 珠洲も瀬里菜も歓んでいる。
 
 SNS等で如月鬼堂にやや批判が出て来た。犯罪者への非難がまったくないという批判である。
 もちろん反論する者も居る。それでも炎上の手前となった。
 アダルト放送局なので一般メデアは取り上げない。
 だが国税庁の女性職員がこれに注目した。如月鬼堂が税務申告する所轄の大宮税務署に調査指示を出す。
 この女性職員は滝本美緒里という。
 税務調査には税理士だけが対応する。
 税理士が修正申告を拒否する。大宮税務署の所得税第二部門の調査官は何らかのこじ付けで更正決定を出した。
 だが国税出身のこの税理士は逆に大宮税務署に査察を入れた。更正は取り消された。
 そして滝本美緒里に上から手が回った。さらに庁内で批判の対象となる。
 税理士はその上まだかつての部下にいろいろ要求する。
 滝本美緒里は特定機密保護法違反で懲戒解雇となった。罠に嵌められたのである。退職金もない。
 それでも如月鬼堂と税理士はこの滝本美緒里を許さない。
 そしてその容姿に目を付けた。
 
 第一幕 儀姉妹と荒井枝里 完
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